こんにちは、ワードメーカー株式会社の代表、狩生です。
ランチェスター戦略を勉強していると、シェアについての話がよく出てくると思います。ですが、そこで疑問が生じるのではないでしょうか。
- 「なんでシェアが大事なのか?」
- 「そもそもシェアってどう測るのか?」
- 「中小零細企業がシェアを掴むためには、何を見ればよいのか?」
今日はこんなランチェスターとシェアにまつわる問題についてみていきたいと思います。
なぜシェアが大事なの?
市場占有率が大切です。シェア1位を目指しましょう。
ランチェスターを語る上で外せないのが、シェアという概念です。
でも、なぜシェアが大事なのでしょうか。
シェア1位を目指す理由は簡単です。
シェア1位になると、最も利益性が高くなるからです。
これはきちんとデータで裏付けがされています。ですから、会社を利益体質にしたいと思ったら、市場シェアを上げる必要があるのです。
売上が大きいからスゴイ…わけではない
「ウチの会社はおかげさまで年商●億で…」と売上の規模の自慢をする方が時々いらっしゃいますが、大切なのは売上ではなく、どれだけ一人あたりの利益があるかです。
利益を出した後、税金を支払った残りが”会社の体力”として将来に渡って残るので、会社を存続させ続けるためには、効果的に利益の積み上げていかなければなりません。
ですから、売上は大きいのに利益が出せていない会社というのは、図体ばかり大きくて何も残せていない…極めて不健康な状態と言えます。
従業員数が多いと、大きく見えますので、一人あたりで割ってみるとわかりやすいです。
反対に、規模で見れば中小零細企業と言えども、毎期しっかりと利益を出すことを続けていれば、自ずと優良企業になれます。蓄積されていくからです。
もし会社の目標を売上ベースで考えているという方は、どれだけ残っているか?という視点でも考えるようにしてください。
そして、利益性をよくするためにはシェア1位になることが欠かせないのです。
シェア1位になると、実際どうなるのか?
シェア1位になれば、○○と言えば、■■という状態になれます。
例えば…
- カップラーメンと言えば、日清
- スナック菓子と言えば、カルビー
- 宅配便と言えば、ヤマト
○○と言えば…と言われただけで、誰もが思い浮かべることができる。こんな状態になれるのが、シェア1位の特権です。
そして、シェアと利益というのには相関関係があります。
シェア1位の会社は筋肉質な会社になっています。
上場企業のデータを見ると分かる、シェア1位のすごさ
上場企業の場合、会社の情報が公開されているので簡単に調べることができますよね。
ランチェスター経営では会社の利益を比較する際、よく「従業員一人あたりの経常利益」という指標を使います。
シェア1位の会社の従業員一人あたり経常利益は、シェア2位~4位の会社と比較すると平均して3~6倍も多いと言われています。
当然、シェア1位の企業にお勤めの方が、2位以下の企業の3~6倍も多く働いているわけではありません。倍ということすらないですよね。だいたい1日8時間+残業といったところなので、マンパワー的にはあまり違いがないはずです。
社員は同じだけ働いているのに、シェア1位かそうでないかで、その利益性には大きな差がついてしまう…
この3~6倍という数字を見ると、誰しもがシェア1位になりたい、ならなければという思いが強くなると思います。
中小零細企業の1位の目指し方
シェア1位になりたいと思っても、「車市場」「ビール市場」といった大きなマーケットの中で1位を目指すことを中小企業がやろうとするのは、あまりに無理がありますよね。
でも、「全体市場」ではなく「特定市場」で1位になればいいのです。
具体的には、「○○市××区の水道工事」、「△△駅前の学習塾」といった具合にエリア、業種、ターゲットの年齢層など細かく分けた特定市場で1位を目指せばよいのです。
たとえば、私の出身地(大分県中津市)の場合…
私は、子供の頃からラーメンと言えば「宝来軒」というお店に行くのが当たり前でした。
大分県中津市に当時4~5店あるチェーン店だったのですが、子供の頃はてっきり「宝来軒」は全国にあるものだと思っていました。
ですから、ずいぶん大きくなってから他人に「宝来軒」と言っても分かってもらえないことで、初めて「宝来軒」が全国ブランドではないことを知りました。
本当に無知でした(笑)
実際には「宝来軒」は、全国ブランドどころか大分県全域で強いというほどですらなく、単に中津発祥で中津市に多いだけだったのです。
それでも、中津市民にとっては「ラーメンと言えば宝来軒」なので、中津市のラーメン店市場においてシェア1位、特定市場では大成功を収めていたというわけです。
中小零細企業はどうやってシェアを測るのか?
上場企業や、統計が発表されているような大きな市場、例えばコンビニ業界とか家電業界といったものであれば、シェアを測ることは簡単です。
しかし全体市場の中での自社のポジションを見るというのは、中小零細企業にとってはあまり意味を成しません。
そこで、中小零細企業の場合は宝来軒さんの例のように特定市場でのシェアを調べて1位を目指す方が合っています。
では、中小企業が特定市場でのシェアを調べたい…と思ったら、具体的には何を調べ、どう考えていけばよいのでしょうか?
市場シェアを調べる方法
まずは、ある特定の市場における全体数を調べてから自社の占める割合を調べる、いわゆる特定市場における市場シェア(マーケットシェア)を調べる方法を2つ紹介したいと思います。
方法① 公的・民間機関の統計データを利用する
法人企業統計調査や、民間の調査期間である矢野経済研究所、船井総合研究所、インテージなどが公表している市場規模を表す統計を使って、業界全体の規模を把握してから、「じゃあ自社の対象エリア内だったらどれぐらいか?」を割り出す方法です。
業界の市場規模>商圏内の市場規模…
と、順に求めていけば良いので、とてもシンプルです。
これを行うことで、自社の得意エリア・苦手エリアを売上規模ベースで見るのではなく、シェアベースで見ることができます。
方法② 人口動態から推測する
人口統計を使って市場規模を測る方法もあります。
たとえば赤ちゃんが生まれた方向けに学資保険を提案している代理店の場合。2020年8月、当社の事務所がある福岡市中央区では121人が誕生しています。
次は何%の方が学資保険に加入するか?という割合を調べます。
そして、自店からの加入状況を見ることで、シェアが分かります。
単月のデータなので細かくはなりますが、できるだけ細かく見ることでよりリアルにイメージできるようになるのでオススメです。
同じように葬儀社の方であれば、死亡者数を調べ、葬儀を行う方の割合を掛けることで母数を知り、シェアを見ることができます。
このように人口動態は厚生労働省のホームページから簡単に見ることができ、出生・死亡・死産・結婚・離婚などのデータを得ることができるので、関連する業種の方は参考にしてみてください。
営業シェアを求めるという考え方
次に市場シェアを測るのが難しい…という業界の方でも使えそうな方法を考えてみましたのでご紹介します。それが「営業シェア」という概念です。
これは統計がなくてもインターネット検索などを利用することで、簡単に大まかなシェアを掴む方法です。
方法① キーワード検索
たとえば、「注文住宅 福岡市」というキーワードで検索した時に、自社はどのくらい表示されるでしょうか?
キーワード単位で見た時に表示される順位や数、割合を見ることで、シェアを推測することができます。
また、ランキングサイトや、広告での評価を指標として見ることもできます。
方法② 店舗数や件数での比較
- カフェの場合。○○市にカフェが何店舗あるのか?そのうち何店が自社なのか?
- 看板なら○○市にいくつ看板があるのか?そのうち何個が自社の看板なのか?
- 営業会社であれば、ライバル企業と営業マンの人数で比較をするのもいいかもしれません。
営業シェアを調べる方法を考えてみると、意外と色々とある気がします。
統計にこだわらず「このエリアでどれぐらい普及しているか?」「どれぐらい知られているか?」といったざっくりとしたイメージを持つだけでも、シェアを把握する上での手助けになります。
ランチェスターにおける”シェア”についてのまとめ
ここまで見てきたように、様々なシェアを求める方法というのが存在するので、「中小企業だからシェアが分からない…」とか、「統計がないからイメージできない…」というのは単なる言い訳になってしまいます。
どんな小さな会社でも、ある狭い範囲「特定市場」に区切って数字を求め、比較することで自社のシェアを知ることは可能です。
特定市場のシェアを日々チェックするクセを付けておくと、客観的な自社のポジションの把握に繋がります。
そして、売上ではなく客観的な「シェア」を目標にすることで、経営において正しいかじ取りをすることに繋がると思います。
この記事により、「シェアが分からないから、ランチェスターができない…」という中小企業の方にありがちな誤解が溶け、「そうか、特定市場で1位になればいいのか!」と、明確な目標を持って励んでいただくきっかけになれば私も嬉しいです。